飯炊き三年・・は古くない。「正統的周辺参加」で本物のスキルを身に付ける。|アビリティスタッフの転職・キャリア理論

こんにちは、アビリティスタッフの高山彩香です。

アビリティスタッフの転職アドバイス・シリーズをお届けします。

みなさんはこんな経験はないでしょうか。希望を持って転職してみたら、小さな仕事ばかりでなかなかやりたいことをやらせてもらえない。

本当に磨きたい仕事のスキル、経験したいことがあるのに、先輩たちがいてなかなかそれを任せてもらえない。

今日のキーワードは、そんな一見ストレスフルな状況にこそ、自分の本当のスキルを磨く宝物が詰まっているというお話です。

 

飯炊き三年・・は古くない。「正統的周辺参加」で本物のスキルを身に付ける。

カリフォルニア大学の人類学者であるジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーは、背広の仕立屋での徒弟制度の中で、新人が職場に入って様々なことを学んでいく様子をある言葉で表しました。

それが「正統的周辺参加」という言葉です。

 

正統的、つまり一人前の職場のメンバーとして、その仕事の「周辺」つまり中心的でない言わば雑用のような領域の仕事から参加することを通じて、本当にその仕事に必要な中心的な知識とスキルを少しづつ学習していく。それが正統的周辺参加の考え方です。

ポイントは、この正統的周辺参加という行動は、「教える→学ぶ」といういわゆる教育のスタイルとは全く違っているということ。

すでに、メンバーとして、「参加」している訳ですから、一緒にその仕事を作り上げる責任がすでに存在します。つまり教わるという受動的な立場でなく、脇役の役割から、体験的に学んでゆくことに重要な意味があります。

 

包丁を握るまでに学ぶべきもの

たとえば、調理人となることを志した場合、早く包丁を握って、素晴らしい料理をしたいと望むでしょう。

寿司屋であれば、早くその手でシャリを握りたいと思うはずです。

しかし、職人、特に日本の職人の世界では、なかなかその包丁や、実際の寿司を握らせてもらえません。例えば寿司は「飯炊き3年、握り8年」と言われる世界です。

それは、決して嫌がらせやしごきだけでそうしている訳ではなく、そのお店の技術レベルを守るために必要で合理的な教育制度として、受け継がれているのです。

雑用ばかりさせるのは一見非合理的な教育のようですが、一流の料理人や寿司職人のそばで雑用をすることで、その料理がどんな基準で鮮度の良い素材を選び、調理にはどんな手順が発生し、どのように提供されるか、体験的に深く学んでいく。

包丁の日握り方、使い方や寿司の握り方は、教科書で言葉にしてしまえば、一見数ページで終わるようなシンプルなものかも知れません。

しかし、そこに至るまでに、膨大な情報や技術がその背景には詰まっていて、それは学校のような受動的な教育体制では絶対に学ぶことが出来ないものなのです。

そして、実際に包丁を握るようになったとき、初めて自分の苦労してきた周辺での雑用が、自分の引き出しとなって仕事を大きく支えることになります。何故なら、それは与えられた知識ではなく、自分が日々戦う中で血肉にしてきたかけがえの無いエッセンスであり、他の誰も真似が出来ないものだからです。

これが、「正統的周辺参加」での知識や技術の継承です。

 

正統的周辺参加を転職に生かす

転職という場面でこの正統的周辺参加の考えを知っていれば、例えば、転職した先で思うようなやりたい仕事が出来なくても、焦らずにチャンスを待つことが出来るでしょう。その立場でしか学べないことが必ずあるはずです。

どのような華やかな仕事の裏にも必ずそれを支える地道な技術があり、それは下積みの時に体験的にしか学べないのです。

また、報酬面ばかりで転職先を選ぶのでなく、体験的に自分の将来欲しい知識や経験を学ばせてくれる環境や先輩がいることも、転職先を選ぶ上で重要になってくるでしょう。

 

スピードや合理性が求められる現代で、「飯炊き3年、握り8年」は古くさい徒弟制の名残りと批判されることもありました。しかし現在、あらためてその価値が再評価されて来ているのです。正統的周辺参加は、本物の実力をつけるための、遠回りのようで実は確実な道なのかも知れません。

 

正統的周辺参加(LPP:Legitimate peripheral participation)とは、「社会的な実践共同体への参加の度合いを増すこと」が学習であると捉える考え方。レイヴとウェンガーによる「状況に埋め込まれた学習」の翻訳とともに日本でも活発に議論が行われるようになってきた。「正統的周辺参加」論は、学校以前からの徒弟制において、熟達者から新入りに技が伝承していく様子を観察した研究がもとになっている。最初は下っ端の仕事をしながら、より熟達している人がこなしているより重要な仕事を見よう見真似で覚えていく。徐々に「周辺的」な位置から「中心的」な役割を果たすようになっていく姿を「学習」と捉え、下っ端であってもその共同体の「正規メンバー(=正統的)」であり、周辺部分から徐々に参加度を増していく、という意味で「正統的周辺参加」論と名づけた。

http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/3Block/09/09-1_text.html

 

 

文 アビリティスタッフ・コンサルタント 高山彩香

 

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